加登屋のメモと写真…: 2015年3月アーカイブ
加登屋のメモと写真…
2015年3月アーカイブ

吉田類さん、坂崎重盛さん

清流出版 (2015年3月23日 10:17)

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吉田類さんが「酒場詩人」として、超ビッグな存在となった。


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『吉田類の酒場放浪記 8杯目』(TBSサービス、2014年7月)


・僕はかねてより「酒場詩人」吉田類さんをこの欄へ登場させたいと思ってはいたが、多少の迷いがあった。それが、注目のテレビ番組「クローズアップ現代」で吉田類さんが取り上げられるに及んで吹っ切れた。2015年2月12日(木)、NHK総合テレビ「クローズアップ現代」が、吉田類さんを取り上げたのだ。「今夜ももう一杯――酒場と日本人の新たな関係」と題し、吉田類さんが取材されていた。類さんが、酒場で一杯飲む姿をバックに、番組は夜ごと、酒場に惹かれ訪れる人々のルポを通して、大衆居酒屋の持つ魅力の深淵に迫ったものだ。キャスターはお馴染みの国谷裕子(くにやひろこ)さん。橋本健二(早稲田大学人間科学学術院教授)さんがゲストで、「なぜ、今夜ももう一杯」なのか、を分析してみせた。橋本健二さんは、類さんが大衆酒場ブームの先導役となった理由について、「大量消費社会が極限化する中で、決して背伸びをしない酒との向き合い方、手触り感ある食やコミュニケーションが見直されているのでは……」と語っている。橋本さんは、自らも居酒屋めぐりを趣味とするが、同時にフィールドワークでもあると、自著『居酒屋ほろ酔い考現学』(毎日新聞社)に書いている。縄のれんの向こうに、日本のいまが垣間見える。ゲストに階級論でお馴染みの社会学者に白羽の矢を立てた、「クローズアップ現代」のスタッフの目は、さすが確かだと僕は感心した。類さんは、酒の飲み方にも一本筋が通っている。酒と酒肴を頂くにも一家言持っている人だ。NHKの慧眼ぶりには驚くばかり。類さんといい、橋本健二さんといい、恰好の時代の牽引者を人選したものだなと感服した。

・テレビ番組は視聴率こそが通信簿である。視聴率を稼げるのが、類さんの一番の強みである。類さんが訪ねる居酒屋は東京が多いが、北は北海道から南は沖縄、石垣島まで、全国を飲み歩くので、行く先々の酒場で「テレビ、見てますよ!」と言われることが多い。世の呑兵衛たちの心を熱くする類さんの番組が、全国ネットで放映されているからだ。それが、BS-TBSチャンネルの月曜日夜9時からの1時間番組、「吉田類の酒場放浪記」だ。毎回、四軒ほどの飲み屋を紹介してくれる。BS-TBSのほか、CS-チャンネルだと、僕の地域ではCS-554とCS-556でも毎日、4回か5回、20分番組で類さんの酒場放浪記が放映されている。訪ねる酒場がすべて異なるのも嬉しい。類さんは、よほどの人気タレントでも、顔色なさしめるほどの露出度を誇っているのだ。

・そして4年前からだが、NHKの看板番組「紅白歌合戦」の向こうを張って、大晦日には『年またぎ酒場放浪記―吉田類とカウントダウン』という年越し特番が組まれている。実に6時間もの長時間特番だ。2014年から2015年への年越し生放送では、「開創1200年・四国お遍路歩き旅&樽酒鏡開き」 と題し、類さんが四国八十八か所をお遍路しながら、四国の居酒屋を巡る様子を伝えている。高知県人の類さんは、懐かしの故郷への里帰りもあって、余計杯は進んだようだ。四国のお遍路と居酒屋巡りとのコラボレーション。地酒を楽しみ、地元の新鮮食材を使った酒肴に舌鼓を打つ類さんは、実に幸せそうだった。

・ここで吉田類さんのプロフィールを紹介しておく。高知県生まれ。66歳。酒場詩人。3歳の時に父親と死別。小学生の頃に絵を習い始める。かねてから憧れを抱いていた京都に小学校卒業と同時に移り住み、中学・高校時代を過ごす。その後ニューヨークやヨーロッパ等を放浪しながら絵を勉強し、シュール・アートの画家として主にパリを拠点に約10年間活動する。30代半ばで活動の場を日本に移し、イラストレーターに転身。1990年代からは、酒場や旅に関する執筆活動を始めるかたわら、俳句愛好会「舟」を主宰する。独身、一人暮らし(『吉田類の酒場放浪記』より)。高知県観光特使及び仁淀川町観光特使を拝命。猫好きでも知られ、公園で見つけた野良猫に“からし”と名付けて飼い始め、17年間を一緒に過ごした。“からし”が死んだ後は、典型的なペットロス症候群に襲われる。虚脱感から立ち直るのに約5年間を要したという。

・類さんの番組人気・知名度の上昇が顕著となった2010年以降、長時間スペシャルや通常放送枠の4本目で放送される「特別編」が度々制作されている。全部をご紹介するわけにはいかないが、主だったものだけでも凄い数だ。『吉田類の今日は始球式』(2010年11月)は、プロ野球公式戦「横浜対巨人」(横浜スタジアム)で、類さんが始球式を務めた時のもの。『吉田類の酒場放浪記スペシャル――奥の酒道・芭蕉と呑む!』(2010年12月、BS-TBS開局10周年記念番組)は、この放送をもって、紹介された酒場が400軒を超える節目となった。2012年6月より『酒場放浪記スペシャル――海の男 吉田類とほろ酔い3人娘』として、新たに美しい女性3人が加わった。類さんが月曜日、女性陣は土曜日の放映となっている。新規放送では番外編として『吉田類の今日は釣り日和』が放映、城ヶ島の「中村屋」(神奈川県三浦市)が紹介された。2013年9月の『祝! 10周年! 吉田類の酒場放浪記スペシャル――10年の奇跡をふりかえろう』では、550回を超える放送エピソードから主に地方ロケ中心にセレクトして放映。続く『吉田類の赤坂サカスで10周年!!』(2013年9月)では、同年9月1日に赤坂サカスで行われた番組10周年を祝うトークライブの模様が放映された。『おんな酒場放浪記』の倉本、古賀、栗原の美女3人が駆けつけて、類さんとビールを飲みながらトークを展開している。

・『吉田類の酒場放浪記 忘年会スペシャル』(2013年12月)という番組もあった。梅島の「こんちゃん」で吉田が酒と酒肴を頂きながら2013年を振り返り、10周年記念関連の番組本とDVDが紹介された。終盤には類さんが『BAD BAD WHISKEY』を生歌で披露した。類さんの歌いっぷりだが、まあまあの及第点だった。これで類さんは一つ肩書きが増えた。ジャズ・ヴォーカリストの仲間入りを果たしたわけだ。2014年7月の『吉田類の酒場放浪記 暑気払いスペシャル』は、東京・上野の「上野精養軒」ビアガーデンでの収録が斬新だった。『吉田類の今日は授賞式』(2014年10月)では、同9月に「グランドプリンスホテル高輪プリンスルーム」で『第12回グッドエイジャー賞』(主催:日本メンズファッション協会、グッドエイジャー委員会)を開催した時の模様が、収録放映されたもの。受賞者は吉田類さんのほか、金美齢、竹下景子、小松政夫、堀内孝雄、吉田輝幸の各氏。類さんはその夜、近くの居酒屋「壇太」で一人祝杯を上げたようだ。『吉田類の酒場放浪記 忘年会スペシャル』(2014年12月)は、前・後編2部構成。合計5時間に及ぶ長時間番組だった。後編は2013年12月31日に生放送された「年またぎ酒場放浪記」の「九州横断! 龍馬の足跡を辿る」が再放送された。

・テレビでのご活躍もさることながら、著書も多々刊行されている。酒場と酒場をめぐる人間模様をテーマにした著書が多い。『立ち呑み詩人のすすめ』(同朋舎 びっくりぶろ、2000年9月)、『東京立ち飲みクローリング』(交通新聞社 散歩の達人ブックス:大人の自由時間、2002年1月)、『酒場歳時記』(日本放送出版協会 生活人新書、2004年9月)、『酒場のオキテ』(青春出版社 青春文庫、2007年4月)、『東京立ち飲み案内』(メディア総合研究所、2009年4月)、『酒場を愉しむ作法』(ソフトバンク クリエイティブ ソフトバンク新書、2010年9月)。
また、BS-TBSの番組とリンクさせた単行本シリーズも好評発売中である。『吉田類の酒場放浪記』(TBSサービス、2009年4月)を皮切りとして、『吉田類の酒場放浪記 2杯目』(TBSサービス、2010年7月)、『吉田類の酒場放浪記 3杯目』(TBSサービス、2010年12月)、『吉田類の酒場放浪記 4杯目』(TBSサービス、2011年7月)、『吉田類の酒場放浪記 5杯目』(TBSサービス、2011年12月)と、これまで都合5冊まで刊行されている。まだまだ、類さん人気に陰りは見えない。人気番組として視聴者の熱い支持を受けている。このシリーズも続刊が期待されている。
昨年刊行された単行本は、『酒場詩人・吉田類の旅と酒場俳句』(KADOKAWA、2014年2月)と『酒場詩人の流儀』(中公新書、2014年10月)の2冊。相変わらず、類さんはいいペースで執筆活動を続けている。今の僕は、ただの呑兵衛に過ぎないが、類さんはただの呑み助ではない。この年になっても、せっせと原稿を書いているところが凄い。仕事をした後の一杯は、より一層美味しいことは経験上推察できる。年を重ねながらも、人生を謳歌し続ける類さんは、僕にとって羨望の的である。これからも大いに飲み、大いに食べ、大いにお客さんらと交歓しながら、全国津々浦々の一押し酒場を紹介して欲しいものである。

・もう一つ“呑兵衛”たちの胸を熱くするテレビ番組があるが、ご存じだろうか。それが、BS-ジャパンで2014年4月1日から始まった『酒とつまみと男と女』である。火曜日の21時から放映される世の酒好き向けの番組だ。不良隠居役で旧知の坂崎重盛さんが出演している。雑誌『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子と交替出演だ。この番組も録画して、僕は喜んで見ている。坂崎重盛さんと吉田類さんは、かつての僕の仕事仲間であった。仕事でも、酒でも、遊びでも、とことん付き合って肝胆相照らす仲といっていい。僕が身障者になっていなかったら、今頃、毎日のようにつるんで飲み歩いていることだろう……ということを書きながら、ご本人に確かめたら、なんと3月一杯で終了になったとの話。最終回に吉田類さんが、局が違うのに出てくれたというご報告である。


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路地裏の居酒屋巡りが大好き。坂崎さんのステッキに注目。


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甘いものにも目がない。現在、「アートアクセス」で“年甲斐もなく甘い生活”を連載中。


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本置場でのスナップ。古本とステッキとひょうちんに囲まれて。

・坂崎重盛さんは、東京生まれ。72歳。千葉大学造園学科卒。横浜市公園部で児童公園等の設計に参加。退職後、出版社に勤務する。1981年、遊戯的出版プロデューサー集団「波乗社」を設立して代表に。ダイヤモンド社時代、僕はこの波乗社と組んで、数々の話題本を出版刊行してきた。そうこうするうち、坂崎さんは、“新講社”という出版社も立ち上げ、出版活動も開始した。出版不況が伝えられている中で、これまで2社とも順調に社歴を重ねているようだ。最初から坂崎さんは、会社経営を幹部社員に任せ、原稿執筆に余念がない。かつて四〇代のころは、社員一同に「なぜ、もう少しよい企画を出さないのか!」と、当り散らしたという噂も。しかし、今日はさすがに人格も円満になったそうな。なお、THE ALFEEの坂崎幸之助の叔父(実父の末弟)であり、一回りほど歳が上の粋人とあって、幸之助君にとっては憧れの叔父だったという。

・坂崎さんの本造りの一端をご紹介しよう。『90年代ビジネスは快楽志向』(ダイヤモンド社、1990年)、『なぜ、この人の周りに人が集まるのか 人望力についての実感的研究』(PHP研究所、1990年)、『豚もおだてりゃ樹に登る 河童もけなせば溺れ死ぬ ほめて生かそう自分も人も』(PHP研究所、1993年)、『超隠居術 快楽的生活の発見と堪能』(二玄社、1995年)、『道草的人生のヒント 「ココロ」の休日が人間を育てる』(大和出版、1995年)、『蒐集する猿』(同朋舎、2000年)、『東京本遊覧記』(晶文社、2002年)、『Tokyo老舗・古町・お忍び散歩』(朝日新聞社、2004年)、『一葉からはじめる東京町歩き』(実業之日本社、2004年)、『「秘めごと」礼賛』(文春新書、2006年)、『東京下町おもかげ散歩 明治の錦絵・石版画を片手に、時を旅する、町を歩く』(グラフ社、2007年)、『東京読書 少々造園的心情による』(晶文社、2008年)、『東京煮込み横丁評判記』(光文社、2008年)、『神保町「二階世界」巡り 及ビ其ノ他』(平凡社、2009年)、『「絵のある」岩波文庫への招待 名著再会』(芸術新聞社、2011年)、『粋人粋筆探訪』(芸術新聞社、2013年)、『ぼくのおかしなおかしなステッキ生活』(求龍堂、2014年)等々、精力的に執筆刊行してきた。その他、雑誌『東京人』にも、しばしばエッセイを寄稿している。それにしても坂崎さんの単行本企画の眼の付け所は斬新だ。やはり単行本は企画力がものを言う。

・僕は坂崎重盛さんとはタイのバンコクへ、吉田類さんとは香港へと、海外旅行をご一緒したことがある。お二人とも、ユニークな嗜好、趣味の持ち主で、一緒にいて飽きさせない点で似ている。普通の方とは異なる方法で旅を楽しむので、ハプニングや面白いエピソードにはこと欠かない。しかし、差しさわりがあるのでここでご披露するわけにはいかない。ところで、坂崎さんはステッキ(杖)のコレクターとして、類さんは帽子のコレクターとしてつとに知られる。そのため、二人とも海外旅行に出ると、遊びながらもコレクターとしての目を光らせる。蚤の市、野外マーケット、専門店などを探訪物色し、鋭い感覚でコレクションの成果を上げている。僕にはそんな才は微塵もなく、ただただ恐れ入っている次第だ。

・最後に、ダイヤモンド社で僕が編集担当した『香港 極上指南』(香港お百度参りの会編、1992年3月)と題するユニークな本を紹介する。類さんには、イラスト地図を20点ほど描いてもらった。
“香港お百度参りの会”は、会長が神戸明さん。カメラと万年筆のコレクターで知られた人だ。光文社の名物編集者でもあった。惜しくも1997年6月1日、銀座の中古カメラ店前の街頭で、心筋梗塞の発作を起こし急逝された。神戸さんは、吟行にも何度かご一緒したことがあるが、俳句のセンスが抜群だった。神戸さんの天性ともいえる言葉選びは群を抜いていた。坂崎さん、吉田さんも俳句には造詣が深かったが、神戸さんの感性の閃きには一歩譲ると僕は思う。吟行には、波乗社の石原靖久さん、山口哲夫さんやデザイナーの鈴木一誌さん、作家・演出家の滝大作さん等も参加した。ある時は作家・江國滋さんをゲストに迎えて句作を楽しみ、後は酒が入り無礼講となった。談論風発する愉快なひと時であった。いま思えば、あのままの生活を続けていたら、なんと幸せな人生だっただろうと夢想する。ダイヤモンド社を中途退社せず、労多くの清流出版を創業しなかったらいったいどんな人生が待ち受けていたのか……。もう一回生き直すことが出来るのなら、やってみたい気がする。僕の人生の恩師・椎名其二翁が訳出した名著『出世をしない秘訣』(ジャン=ポール・ラクロワ著)の教えを破った咎めを、今更ながら悔いている。嗚呼。



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(左)『香港 極上指南』(香港お百度参りの会編、ダイヤモンド社刊、1992年3月)のカバー。
(右)奥付のスタッフ紹介。吉田類さんは入魂的イラストとなっている。

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右のページは吉田類さんのイラスト付きのユニークな地図。


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吉田類さんのイラスト地図は、本当に面白い!      

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