加登屋のメモと写真…: 2010年4月アーカイブ
加登屋のメモと写真…
2010年4月アーカイブ

川鍋宏之さん、僕

清流出版 (2010年4月26日 15:03)

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川鍋宏之さん、僕

 

・弊社から『福田和也と魔の思想』(2005年)、『悠仁天皇と皇室典範』(2007年)の二冊を刊行させていただいた筑波大学名誉教授・中川八洋さん。この度、緊急出版を提案してこられた。現・民主党政権に危機意識を持ち、参議院選挙前のできるだけ早くに出してほしいとのご要望である。中川さんの依頼文によれば、民主党政権がこのまま続くと日本は崩壊(カタストロフィ)へと向かいかねないとまで言い切る。その論拠をざっと見ていくと、民主党のシンパサイザーでさえ、「これは容易ならぬ事態である」と思うこと必至で、大いに波紋を呼びそうなテーマである。

・先に弊社では、藤原肇さんの著になる『さらば、暴政――自民党政権、負の系譜』という本を刊行した。小泉から安倍、福田、麻生と続いた自民党政治の迷走と暴政ぶりを総括したもので、当然のことながら民主党寄りの論点で書かれている。この本は特にネットを中心に浸透し、増刷にもなっている。中川さんの本は、まったく逆の立場からの論調で、それだけに一瞬躊躇したのも事実だが、民主、自民両陣営の本を発行するのも、小社のような小出版社らしくて良いじゃないか。

・テレビ司会者の田原総一朗さんなら、もっと激しく対立する者同士を登場させ、丁々発止と渡り合う場を用意するであろう。いわば「お互いをけしかけるジャーナリズム」である。岐路に立たされている日本の政局。どう舵取りしていったらいいのか。群雄割拠する小政党も含めて、いずれにも言い分はあるはず。持ち込まれた原稿を、平等に出版して、読者の判断を待ちたい。そんな観点から、民主党政治の危機的状況を指摘する中川八洋さんの『民主党大不況――ハイパー・インフレと大増税』(仮題)を刊行するつもりだ。これも小出版社が生き残る一つの選択肢である。

・天下の秀才である中川八洋さんは、初めは理工系の学問(東京大学工学部航空学宇宙工学コース)を目指し卒業したが、その後、ガラッと興味の対象を変え、米国に留学し、スタンフォード大学政治学科大学院を修了された。帰国後、科学技術庁に勤務された後、筑波大学に転じ、同大教授、現在は同大名誉教授になられた。

・理工系から文系へと転じた中川さんは、現在まで約五十冊の単行本を上梓されてきたが、それを著作集か全集として出版したいという構想もお持ちである。『中川八洋著作集(案)』の全貌を拝見すると、深淵な構成によって、清流出版の既存書も位置づけられる。まず全体を見ると、哲学・現代思想・憲法思想のジャンル(第1巻-第4巻)、国際政治学のジャンル(第5巻-第8巻)、比較政治学のジャンル(第9巻-第10巻)の3部構成になっている。弊社より刊行した『悠仁天皇と皇室典範』は、第2巻「皇位継承学」に、もう一冊の『福田和也と魔の思想』は、第4巻「現代思想」の範疇に入る予定となっている。そして、今回の『民主党大不況――ハイパー・インフレと大増税』(仮題)は、第9巻「"日本解体の制度改悪の連鎖"をいかに阻むか」に入る予定とのことだ。

・写真に写っているのは、本書の校正、校閲の任に当たった川鍋宏之さん(右)である。本来ならば、著者・中川八洋さんが写っていなければいけないのだが、緊急性を帯びた企画なので、どんどん進めた結果、残念ながら間に合わなかった。それに中川さんはどうやら、都心の赤坂のマンション住まいから、閑静な別荘地に居を移したようである。

・川鍋宏之(通称ナベ)さんのお兄さんは、『週刊現代』元編集長で、1975年に『日刊ゲンダイ』を作ったあの有名な川鍋孝文さんである。漏れ伝えるところによると、「賢兄愚弟」、「小市民的な人生を送れない弟」とお兄さんは言うようだが、僕から見ると、どうしてどうして弟の宏之さんは立派な見識があり、校正・校閲者としても極めて有能な方である。作家的な資質もあり、良質のエッセイや小説も書ける方だと僕は確信している。

・ナベさんは、僕がかつてダイヤモンド社で『レアリテ』誌の編集者をしていたとき、助っ人募集に応じてきた一人。約100名の応募者の中でも光っており、僕が自信をもって採用した優秀な男である。入社してしばらくの間、ナベさんは、僕のことを「試験官」と呼んで揶揄したものだ。その後、ナベさんはダイヤモンド社の組合委員長として、大いにその辣腕ぶりを発揮することになる。考えてみれば、その頃は、二人ともまだ三十歳前後の若者だったわけだ。

・中川八洋さんに、外部編集スタッフとしてナベさんを予定している、と言うと、『日刊ゲンダイ』は中川さんをこれまで目の敵にしている共産党機関紙のようなので、お断りしたいと言う。僕は、川鍋兄弟の間を知っているので、仕事の上で中川さんの心配は全く杞憂だと反論した。藤原肇さんの『さらば、暴政――自民党政権、負の系譜』も、川鍋宏之さんが校正、校閲している。結果的に、川鍋さんを起用してよかったと確信している。中川さんも校正・校閲の仕事ぶりを見て、この人選に納得してくれたものと思う。

 

・中川さんの真正保守主義者としての本領が、本書にはよく現れている。ちなみに、2部構成であり、第1部 「民主党の解剖カルテ――日本崩壊への政治アジェンダなのか?」、 第2部 「溶解して消えるのか? 迷走する自民党――政権奪還の道が、ただひとつだけある」となっている。  

・もう少し詳しい内容については、章タイトルをざっとご紹介しておこう。

 第一章 北朝鮮型「子供の国家管理」

     ――民主党「子育て支援」の、本当は怖ろしい正体

 第二章 "欲望人の衆愚政治"となった、日本の民主政治

 第三章 夫婦別姓、ラブ&ボディ、フェミニズム 

     ――「日本人絶滅」への三大スーパー高速道路

 第四章 ナチ型の一党独裁体制が、民主党の狙い

     ――魔語「官僚主導政治の打破」で隠す底意

 第五章 東アジア共同体、地方分権、外国人参政権

     ――「日本国の廃滅」に至る、国家解体の三大政策

 第六章 "大企業つぶし"が、民主党の秘めた真意

 第七章 "英国の大宰相"マーガレット・サッチャーに学ぶ

     ――福祉国家路線の断罪、"自立&勤勉"の復権、

       社会主義思想の絶滅

 第八章 "転落と破綻"の自民党二十年史

 第九章 「国家永続法」(仮称)の制定

     ――出生率低下/家族解体/勤勉の倫理の否

       定/赤字財政の増大/〈法の支配〉の破壊

・今年の夏は、保革混在、稀に見る政治不況下での〈決戦〉が見られるだろう。二大政党それぞれに、政治への不信感が払拭できないでいる。無党派層の投票行動によっては、多くの政治家たちの予想を裏切る結果になるかもしれない。そうなると、弊社の出版物も余り期待できないかもしれない。

竹本さんと堀尾さん

清流出版 (2010年4月 1日 16:20)

 

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竹本忠雄さん、堀尾真紀子さん、長沼里香、僕

 

・堀尾真紀子さん(右)は昨秋、弊社から『絵筆は語る――自分色を生きた女たち』を上梓されている。その堀尾さんから、筑波大学名誉教授の竹本忠雄さん(左から2人目)をご紹介いただいた。早速、日時を指定して、担当編集者の長沼里香(左)をはじめ、わが社の幹部(藤木健太郎、松原淑子、臼井雅観)を交えて竹本さんの単行本企画案を検討することになった。


・堀尾さんは東京藝術大学大学院修士課程入学後、フランスへ留学(フランス国立美術工芸大学)しているが、現地で竹本忠雄さんの知遇を得て、すでに 40年近いお付き合いになるという。堀尾さんの留学期間(1969-70年)には、僕もフランス語版の雑誌『レアリテ』の版権交渉や編集技術、販売・広告戦略のノウハウを取得するためパリに滞在していた。だから三人が現地で遭遇する可能性もあったわけだが、それほどドラマチックな出会いはさすがに用意されていなかった。今回、40年という長い時を経てようやく実現したのである。


・今回の企画は、堀尾真紀子さんの著書(『画家たちの原風景――日曜美術館から』、NHKブックス刊、1986年)の中でも、1章を設けて記述されている銅版画家・長谷川潔を改めて世に問いたいという話である。堀尾さんも件の『画家たちの原風景』で長谷川潔の生涯を俯瞰し、「マニエール・ノワール」(黒の様式)を完成するまでの経緯を執筆されている。当の長谷川潔は1980年に亡くなった。画家本人が執筆、構成した本が上梓(1982年)されているが、読みたくても絶版となった今ではなかなか手に入らない。


・そこでこの貴重な『白昼に神を視る』(長谷川潔著、白水社刊、4500円)をわが社から復刻しようというのである。一言でいえば長谷川潔の画文集だ。語録、遺稿、書簡、回想録を集成し、重要作品を精巧な図版によって忠実に再現する。渡仏62年、ついに一度も故国に帰ることなくパリに客死した銅版画家・長谷川潔。彼はこの本で、芸術の底流に流れる思想的背景、対自然観、作品の構成法、版画の技法などを明らかにしている。


・長谷川仁、魚津章夫、竹本忠雄の各氏が編集者の立場でこの本に深く関わっている。とくに「回想録」は、竹本さんが1967年10月から約 2年にわたって画家のアトリエに通いづめ、本人から直接聞き書きをした労作である。さらに竹本さんは、刊行に当たって、今日的意義を加筆するとともに、堀尾さんの「長谷川潔の思い出」等も追加、更なる充実を図りたい意向だ。幸い来年は、長谷川潔の生誕120年、没後30年の節目に当たる。出版に絶好のタイミングということもある。


・ここで竹本忠雄さんのプロフィールを紹介しておきたい。東京教育大学大学院修士課程修了後、1963年に仏政府給費留学生としてソルボンヌ大学に留学。専門はフランス文学だが、美術、文芸、霊性文化の領域でも評論、講演活動をする等、国際的に活躍しておられる。コレージュ・ド・フランス元客員教授で、フランス騎士勲章受章。アンドレ・マルローとの親交で知られる方でもある。『ゴヤ論―サチュルヌ』 (アンドレ・マルロー著、竹本忠雄訳、1972年)や『アンドレ・マルロー――日本への証言』(竹本忠雄著、美術公論社刊、1978年)など、マルロー関係の名著訳書もある。


・僕は会う前から竹本さんには旧知の印象があった。その理由は、共通の友である評論家の宮崎正弘さんのお蔭だとも言える。彼のブログ「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」が日々ネット配信されてくるが、例えば、フランスの文化大臣アンドレ・マルローは1974年に日本を訪問、熊野・那智の瀧や伊勢神宮に参拝している。五十鈴川の清流で禊をうけた折に体得し「このバイブレーションはなんだ」と震えたことを宮崎正弘さんがブログに書いている。


・そして、竹本さんに関する動向もよく記述される。著書『皇后宮美智子様 祈りの御歌』(扶桑社刊)、『天皇 霊性の時代』(海竜社刊)などを書評で取り上げているが、特に歌集は、竹本さんが皇后宮美智子様の『瀬音―皇后陛下御歌集』(大東出版社刊、1997年)をフランス語に訳された労作(歌集『SEOTO』)である。竹本さんは御歌選集『セオト―せせらぎの歌』を3年がかりで訳し、2007年に完成されている。皇后伝執筆のために積み重ねてきた研究は、《皇后宮(きさいのみや)美智子様―ポエジーと祈り》として訳書の後記に生かされている。この竹本さんの訳業は、全世界の心ある方々に皇后宮美智子様の素晴らしさを伝える好著となった。実は、僕の部屋には美智子皇后陛下が御蚕の繭玉を慈愛溢れる眼で見つめている写真が飾ってある。日々、そのお姿に挨拶し、「今日もお元気ですかと?」お尋ねするのが僕の日課となっている。


・竹本さんによれば、『白昼に神を視る』を段取りよく制作するには、横浜美術館がキーポイントになるとのこと。同館は長谷川仁さんからの寄贈を含め、長谷川潔の作品を3,000余点所蔵しているという。そして、同館学芸員の猿渡紀代子さんが長谷川潔の熱心な研究者であり、『長谷川潔の世界』(渡仏前・渡仏後1、2全三巻、有隣堂刊)の著書がある。堀尾さん、猿渡さんのご協力をあおいで、良い本が出来ることを期待している。


・なお、堀尾さんの旧著『画家たちの原風景――日曜美術館から』も、弊社で復刊することを決めた。この本は、第35回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞している。長谷川潔のほか、神田日勝、芹沢銈介、池田遙邨、三岸好太郎と節子、斎藤義重......などを俎上に乗せた画家論である。かつて『家永三郎集、月報、第3巻、1998年1月』に堀尾さんが、《生活者にむける熱い眼差し――「日本文化史十二講」から》という論文をお書きになっている。今までこのような幅広いジャンルを、これほど優しく平易に書ける方はざらにはいないと実感した記憶がある。今回、復刻した本をお読みいただけば、皆さんにも僕の言うこの意味を分かっていただけるに違いない。

 

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