加登屋のメモと写真…: 2002年12月アーカイブ
加登屋のメモと写真…
2002年12月アーカイブ

ヤスケンの死ぬまでパワーアップ

清流出版 (2002年12月 1日 17:15)

   月刊『清流』の人気コラム「ヤスケンの死ぬまでパワーアップ」の執筆者というより、私の高校の同級生・安原顯氏が医者から「肺癌で余命1ヶ月」を宣告された。私は、いま何と友に語りかけたらいいのか分からない状態である。命ある限り最後の最後まで、奇跡を信じて「天才ヤスケンよ、がんばれ!」と言うしかない。
   ヤスケンは中央公論社時代から鬼才編集者として鳴らした。新人発掘、大御所起用など数々の伝説を残している。また安原顯の著作群は、現代の読書ファンには羅針盤として意義深いものだと、私は断固言い切って憚らない。こんな才人が私より早く死ぬなんて、神も仏もない!
   でも、いくら賛辞を重ねても、死を目前にしたヤスケンにとって、これっぽっちの役にも立たない。
   ヤスケンとは、早大高等学院時代、「芥川賞の○○読んだか?」「あの作品はダメだな」「英語の××、辞書なしで読破したんだよ」といった類いの話を、私はいつも聞かされていた。アナイス・ニンの名前も高校1年生の時、早熟の彼に教えてもらった。ことほど左様な次第で、ヤスケンは日本文学や海外文学の新しい知識、否、ジャンルを問わず、刺激的な切り口で仲間を煙に巻いていた。日本人の無気力・だらしなさを叱る評論家精神がすでに高校生の頃から発揮されていた。
   お互い、同じ出版界にいながら、これまで仕事上全然交わらなかったのは不思議に思う。考えてみれば、一方は文芸誌の花形編集者、私は経済雑誌系の出版社育ちで、畑違いの世界に住んでいたこともあるのだろう。その二人が、卒業以来、四十数年ぶりに、再会した。天才ヤスケンは、見事に高校時代と同じスタンスであった。否、啓蒙精神の面では熟成していた。
   政治・経済・法律・学問・文藝......、要するに政・官・財・法・学......の日本人の軟弱と頽廃ぶりを斬り捨てる舌鋒は鋭く、激しさを増していた。「五流国・日本」「ゴキブリ以下の人類」を憂え、罵倒した!
   天才ヤスケンが呟いた罵詈雑言は、世に中を憂えて発する「今生の叫び」と納得できる。クソ人類、忌々しい戦争、邪宗団体等々......。ヤスケンの気持ちが痛いほど分かる。
   いまや友の書いた本を出版することが、私の精一杯協力できること。今年12月から明年1月にかけて、わが社から出す「安原顯の本」3冊、できるなら4冊(目下企画中)を仕上げて死を迎えてくれ。同じ出版社から同作者の本を3?4冊同時期刊行という出版界始まって以来の刊行スケジュールには、さすがに鬼神ともいえども避けて通るはず、ついでに肺癌も怖れをなして飛んでゆくのではないか。
   書名を刊行順に書いておきたい。
●『ふざけんな人生』
 本体価格1,800円 12月17日頃書店店頭に並ぶ予定
●『読んでもたかだか五万冊! 本まみれの人生』
 本体価格2,000円 12月19 日頃書店店頭に並ぶ予定
●『ファイナル・カウントダウン ヤスケンの編集長日記』
 本体予定価格1,600円 15年1月16日頃書店店頭に並ぶ予定
●『ヤスケンの死ぬまでパワーアップ』 本体予定価格1,600円 原稿半分出来上り

   くどいようだが、もう一度だけヤスケンの人となりに触れておきたい。ヤスケンは活字を偏愛してきた、いわば「活字中毒者」である。質量ともに、これだけの読書人は、世界広しといえどもそうはいないはず。本に淫する中で培ったものであろうか、独特の感性で真贋を嗅ぎ分けるのである。この嗅覚にはつくづく感心する。ヤスケンが推薦する本を、だまされたと思って一度読んでみて欲しい! あなたの人生に激震が走るかもしれない。

 

yasuhara.JPG

「評判は自分でつくるものだ」――ヤスケンはこう語っていた。だから、"天才ヤスケン"の称号も安原顯自身がつくったと思う。それにしても、原稿執筆、トーク番組出演、膨大な読書、精力的にレコード&CDを聴き、美術展・映画館巡りもする......。どれをとっても彼一流の視座が光る。一体、いつ寝るかわからないほどのエネルギッシュな活動ぶりだった。これでは身体がいくつあっても足りぬ。充実した日々を全力で駆け抜けていった。「元気に死ぬ」ことを祈っていた男は、仕事を死の直前まで続け、精一杯生き抜いて逝った。

 

 

 

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