心のどこかの風景 -女性がおしえてくれること-
第42回 お金のつかい方(後編)  ──失敗しないための大事なルール
(掲載日:2012年1月15日)


  一番難しいのは、それが消費なのか、投資なのかの見極めである。身体によい食材を買うことは自分への投資である。普段使いの車のガソリンを買うことは消費である。投資とは金融関係だけではなく、英会話などの学びも含まれる。だから、お金をつかうときにいつも考えるのだ。これは消費なのか、投資なのかと。浪費はほんの少しに留めておきたい。

  そこで先の話に戻る。目の前のほんとうに欲しいものとは自分にとっての消費なのか、投資なのか、浪費なのか。女性の言葉の本意は、投資であれば無理をしてでも買いましょうということである。そこには確実に大きなリバレッジが働いていて、値段以上のリターンが見えているものは、ひとつのチャンスであるから見逃してはいけないということだ。

 人というものは常に自分を助けてくれるものを探している。買い物をしながらぼんやり何かいいものないかなあと思うのは、今の自分を助けてくれるものはないかなあという気持ちである。日用品も食べ物も、着るものでも、なんでもそうだ。助けてくれるものを手に入れることは、おおむね消費か投資のどちらかの部類に入るだろう。だからこそ、お金の使い方のバランスをとるという意味で、そのどちらなのかを自分が知っておくことは必要であろう。他人から見たら浪費かもしれないが、自分にしてみたら立派な投資であるなら気にすることはない。どんどんお金を使えばいいと思う。

 ここでその一つひとつを打ち明ける気はないけれど、僕自身、ほんとうに欲しいと思って、悩んだ末、無理をして買ったものは決して少なくない。それでも投資として成立せずに失敗したことは多い。しかし、そんな失敗を繰り返すことは、お金の使い方の学びにつながり、それ以降、失敗は少なくなる。お金の使い方の失敗が少なくなるということは、結果的にお金が減らないということにつながる。

 最後にお金の失敗を少なくする大事なルールというか、コツがある。それはお金を使うときにこう自問するのだ。「こんな使い方をしてお金は喜んでくれるのだろうか」と。もし自分がお金だとしたら、こんな使い方をされたら嬉しいのか悲しいのか。お金が喜んでくれて、嬉しく思ってくれるのなら、きっとその買い物は正しいのであろう。

 「値段で迷っているなら、そしてその使い方にお金が喜んでくれると思うなら、無理してでも買うようにしているわ。もし値段以外で悩んでいて、その使い方でお金が悲しみそうなら絶対に買わない」。女性の言葉をこんなふうに補足すれば、わかりやすいだろう。

 何事もそうだけれども、喜んでもらえれば、必ず感謝をされる。悲しませれば、その悲しみは必ず自分に帰ってくるだろう。
 お金の使い方は人間関係に似ているのである。

(毎月、1日、15日更新)

著者プロフィール
松浦弥太郎
(まつうら・やたろう)
1965年、東京都生まれ。『暮しの手帖』編集長。「COW BOOKS」代表。文筆家。18歳で渡米し、アメリカの書店文化に関心をもち、帰国後に書店を開業。著書に『くちぶえサンドイッチ 松浦弥太郎随筆集』『最低で最高の本屋』『日々の100』『今日もていねいに。』『あたらしいあたりまえ。』『松浦弥太郎の仕事術』『ぼくのいい本こういう本1,2』『あなたにありがとう。』『暮らしのヒント集2』などがある。

COW BOOKS http://www.cowbooks.jp/

暮しの手帖 http://www.kurashi-no-techo.co.jp/

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