心のどこかの風景 -女性がおしえてくれること-
第28回 僕が学んだ育児としつけ(後編)  ──いい父親、いい母親になるために
(掲載日:2011年6月15日)

 育児としつけにおいて、とても大切なことがもうひとつある。それは夫婦が仲良くするということだ。

 親になった自分が、育児としつけを考えるということは、まずは自分の幼い頃はどうだったか、親はどのように自分に接してくれたか、何をしてくれたかと思いを巡らせることである。

 幼い頃の僕にとって、とても嬉しくて、安心したことは何だったのだろうか? それは両親が仲良くしている姿だった。反面、とても不安になったり、何よりも怖かったのは、両親が喧嘩をしていたり、仲を悪くしていることだった。そう思うと、子どもの育児としつけにとって、夫婦が仲良くしていること、その姿を見せるのはとても大切なことであり、育児としつけの土台のようなものであろう。 
 だから、僕ら夫婦は、自分が幼い頃そうだったという話を交わし、子どもの前ではできるだけ仲良くするように心がけようと決めた。

 子どものために、また自分たちのためにも、喧嘩をせず、普通に暮らすことは難しくはない。しかし意識的に仲良くするということはお互いの照れもあり簡単ではなかった。楽しくおしゃべりをしたり、いつも側にいて触れ合うようにする。笑顔を絶やさず相手を思いやることを忘れないように務めた。

 今思い返すと、これだけでも、もし夫婦が出来るのであれば、立派な育児としつけであろうと思う。
 いい父親になるためにはいい夫になること。いい母親になるためには、いい妻になること。この言葉は今でも忘れていない。

 今、娘は中学二年生になった。小学生を過ぎると子どもの成長は親の手を離れ、子どもの社会のなかですくすくと育っていく。思いやり、親切、礼儀、感謝の気持ち、他人へのいたわりなど、子どもは身近な大人を見て、学んでいく。子どもというのは、生まれたときから大人になるまで、常に親の姿を見続けるもの。だからと言って、立派な大人であろうとするのは無理がある。ひとつだけ自分に出来ることは、繰り返しになるけれど、妻にとっていい夫であることで、その努力を、ずっと続けていきたい。

 要するに僕は、子どもに、結婚とは、夫婦とは、素晴らしいものだと思ってもらいたいのだ。

(毎月1日、15日更新)
 

著者プロフィール
松浦弥太郎
(まつうら・やたろう)
1965年、東京都生まれ。『暮しの手帖』編集長。「COW BOOKS」代表。文筆家。18歳で渡米し、アメリカの書店文化に関心をもち、帰国後に書店を開業。著書に『くちぶえサンドイッチ 松浦弥太郎随筆集』『最低で最高の本屋』『日々の100』『今日もていねいに。』『あたらしいあたりまえ。』『松浦弥太郎の仕事術』『ぼくのいい本こういう本1,2』『あなたにありがとう。』『暮らしのヒント集2』などがある。

COW BOOKS http://www.cowbooks.jp/

暮しの手帖 http://www.kurashi-no-techo.co.jp/

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