加登屋のメモと写真…: 2019年2月アーカイブ
加登屋のメモと写真…
2019年2月アーカイブ

小池邦夫さん

清流出版 (2019年2月26日 10:17) | コメント(0) | トラックバック(0)

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絵手紙講師を前に講演中の小池邦夫さん

・久し振りに小池邦夫さんについて書いてみたい。きっかけがある。実は、「あいつ今何してる?」というテレビ朝日(毎週水曜日、午後7時から)があり、9歳の絵手紙天才少女・山路智恵さんが登場していた。この智恵さんが初めて絵手紙をかいたのが、小池邦夫さん宛てのものだった。智恵さんの母堂が絵手紙を小池さんに師事しており、智恵さんが私もかきたいと始めたのだ。智恵さんは小学校入学と同時に、小池さんを受け手として毎日、絵手紙をかき始める。最初は、マジックで絵本の中の絵を真似てかいたりしていたが、筆を使うようになり、だんだん個性も際立ってきた。言葉がいいし、絵にも迫力が出た。作品も葉書サイズで収まらず、大きくなっていく。小池さんは、塾の講師などもしたことがあるが、生徒の才能を見出し、そして引き出すのがうまい。だからこそ智恵さんも、絵手紙を毎日小池さんに宛ててかいて、1000日、2000日と続けることができたのである。簡単に1000日、2000日というが、六年間かき続けたわけで、とんでもないロングランである。ちなみに『智恵の絵手紙1000日』『もしもーし小池先生 絵手紙2000日』ともに、単行本になっている。
 
・小池さんは、智恵ちゃんもそうだが、ちょっと惰性に流されているなと感じたり、ぐんと腕を上げたと感じた時など、節目節目に直筆の絵手紙をくれる。励ましであったり、お褒めの手紙だったりする。もらった側は嬉しいから、それを励みにまた頑張れるのである。実は智恵さんは、僕もよく知っている。平成12(2000)年の4月号から翌、平成13(2001)年の3月号まで、月刊『清流』に絵手紙の連載をしてもらったことがあるのだ。ナスやミョウガ、サンマや毛ガニなど、季節の野菜や魚介類などの絵に言葉が添えられていた。『清流』読者は中年以上の主婦が多く、絵手紙を楽しむ層とリンクしたので連載は好評を博した。現在、智恵さんは37歳になっている。今も絵手紙を続けている。2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」に向け、外国人に東京の魅力を知ってもらうため、東京の見どころ100景を絵手紙にかいているとか。半紙程度の小さなものではない。畳2畳で一つの風景だから、大作ばかりである。小池さんの絵手紙精神でもあるのだが、どんな大きな作品でも、下絵はかかずにいきなり本番である。一気呵成にかききる。これが絵に迫力を生み、線にも緊張感が生まれる。豪雪地帯で知られる長野県栄村に、山路智恵絵手紙美術館があり、智恵さんは、そこの館長も務めている。小池さんの教え子がなんとも大きく育ってくれたものである。才能を見出し開花させた小池さんに拍手を送りたい。

 
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 余談だが、小池さんは40歳過ぎまで、塾で国語を教えていた。教科書通りに教えないから、父母から陰口を叩かれたこともあったらしい。しかし、塾の名声を上げることが起こった。小池さんの教え子が東大に入学したのである。国語力を高めるその方法を聞いて僕は驚いた。なんと小学生の生徒に毎日、自分の家で取っている新聞をスクラップさせた。朝日新聞なら「天声人語」、読売新聞なら「編集手帳」、産経新聞なら「産経抄」を一字一句たがえず毎日筆写をし、疑問点があった場合には、当該新聞社宛に投書をさせた。高学年とはいえ小学生である。習ってない漢字もあるし、難しい言い回しもある。が、とにかく毎日続けさせたのだ。確かにこれなら国語力はつきそうだ。思わぬ副産物も生んだ。というのは朝日新聞の天声人語氏が投書には大いに感動したらしい。しっかり読み込み、わからない点を質問してくるのだから。可愛い手紙がちょくちょく届くことになる。天声人語氏は、小池さんが依頼をしたところ、無報酬で塾を訪れ、2時間ほど講演してくれたそうだ。実にいい話ではないか。


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小池さんの個展会場でツーショット
 
 
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弊社刊行の2冊

・小池さんが、銀座・鳩居堂で個展をされていた時は、必ず見に行っていたのだが止めてしまわれたので、ここ数年お会いできていなかった。小池さんには弊社も大変お世話になった。刊行された小池さんの絵手紙関連本も十数冊にはなろうか。なんとか絵手紙コーナーを書店に設けたいの気持ちはあったが、残念ながら夢に終わった。小池さんが住む狛江市は、絵手紙発祥の地として知られる。小池さんの住まいは僕のマンションとごく近い。隣り組のようなものだ。昨年、『小池邦夫の絵手紙集 自分で光れ』が日本絵手紙協会から刊行された。小池さんの初期の絵手紙中心に編まれたもので、見ていて感慨深いものがある。37歳の時、季刊『銀花』に挿入するため、1年で6万枚の絵手紙をかきあげたが、その夜に最愛の妻・芙美子さんが天に召される。

 失意のどん底に落ちた小池さんは、半年間でたった31枚しか絵手紙をかけなかった。その血反吐を吐くようにしてかいた絵手紙を、小池さんは食べるために個展で売ろうとした。1枚たった2000円である。中学時代から親友の正岡千年さんは、作品がバラバラに散逸してしまうからと止めたそうだ。すると小池さんは、「わしゃあ百姓の出だ。人参や大根を売るのとおんなじだから売る」という。正岡千年さんは真の友である。個展初日に、この31枚すべてを買い取り、無くさないよう封筒に入れた。それを30年間持っていた。それを2010年の「絵手紙の日」が制定された日、亡き芙美子さんの教え子でもある今の奥さんの恭子さんに「記念だから」と渡したのである。小池さんの絵手紙の名キャッチャー、その正岡千年さんの本も出させて頂いた。小池さんとの50年間の友情がにじみ出ている本である。絵手紙はいいキャッチャーがいるから楽しいのだ。世界でたった1枚しかない絵手紙が届く。もらう側も、心がときめくはずである。


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名キャッチャー正岡千年さんの著書

・名キャッチャーといえば、小池さんは日本絵手紙協会の新企画として「自分で光れ」をテーマに1年間絵手紙をかき続けようと提案している。具体的には挑戦したい人は、絵手紙を受け取ってくれるキャッチャーを決め、日本絵手紙協会にエントリーするのである。エントリーすると「エントリー証」が届く。そしてキャッチャー役に宛てて、毎日かき続けるのである。小池さんはこの企画への参加者を50―60人くらいと予想したらしいが、実際は2月下旬の時点ですでに1000人を優に超えたという。5月まで募集されるというから、最終的には2000人を超すかもしれない。凄いパワーである。1年間かき続けて、達成報告書を提出すると、「小池邦夫のオリジナル達成証」がプレゼントされるという。小池さんは過去に1年間かき続けた人たち、また小池さんご自身の経験からして、1年間休まずにかき続ければ、相当、絵手紙に飛躍が認められると確信している。第二、第三の山路智恵さんも出てくるかもしれない

 小池さんが提唱した絵手紙精神「ヘタでいい、ヘタがいい」を見たり聞いたりしたことがあるかも知れない。実は僕もリハビリの一環として絵手紙に挑戦したことがある。いくら「ヘタでいい、ヘタがいい」といわれても、なかなか思い通りにはいかない。絵手紙にはお手本がない。自分で考えて描くしかない。小池さんはいう。「手本に頼ると一生、頼らないとかけない。それより、自分のヘタさに頼るほうがいい。そのヘタさに味があるのだから」と。人間にはつまらぬ見栄がある。上手にかきたい、褒められたいなどと邪念が湧いてくる。小池さんは、上手になったらつまらないという。その人のその人らしさ、味が出ればそれでいいという。僕はその言葉に励まされた気がして、気持ちが軽くなったことを覚えている。

・小池さんは、群馬県の上武大学で絵手紙を教えている。「手がき文化研究所」が学内にあり、その所長が小池さんなのだ。顧問には理事長の澁谷朋子さんが就任し、絵手紙の普及、手がき文化の調査・研究をしている。小池さんは、「直筆文化を廃れさせてはならぬ」の気持ちから引き受けたという。その成果が上武大学の「絵手紙ギャラリー&ミュージアム」開設で実を稔らせた。開設にあたり、上武大学理事長の澁谷朋子さんはこう書いている。
《「絵手紙ギャラリー&ミュージアム」を開設しました。小池邦夫先生の絵手紙を習い始めて22年、大学の美術の時間に絵手紙を導入し7年になりました。学生は絵手紙を楽しみ真剣に取り組んでいます。デジタル全盛の流れに逆らい手でかく喜びを味わう学生の姿を見て、手がき文化の大切さを教えられました。学生たちの絵手紙、地域の皆様の絵手紙、また小池先生の絵手紙などを展示し、皆様に見て頂きたいと考えました。》
 理事長の澁谷朋子さんは、昭和19年、群馬県生まれ。昭和42年、北里大学を卒業。昭和43年、日展評議員・徳野大空氏に書道を、深谷徹氏に油絵を学ぶ。平成4年、小池さんの絵手紙に出会い師事したのである。

 
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小池さんの書になる看板

 実は上武大学には硬式野球部員が230人いる。かなりの大所帯である。その全員が絵手紙を習っているという。そして、なんと絵手紙を習い始めて4年目、その硬式野球部が「第62回全日本大学野球選手権大会」で初優勝を飾った。実力はもちろん、歴史と伝統のある東京六大学野球連盟や東都大学野球連盟の代表校も出場している中で快挙といえる。硬式野球部監督は絵手紙を学んだことが大きかったと小池さんに謝意を伝えたという。小池さんは、飛躍し過ぎではないかと笑ったが、僕は一理ある気がする。というのも、絵手紙は自分をとことん見つめ直す手段として格好のツールだ。自分をどう発信すればいいか、個性を伸ばすにはどうしたらいいか、更には受け取った相手はどう思うかなど、精神的に成長を図る格好のツールなのだ。特にピッチャーとキャッチャーがお互い絵手紙交換を続ければ、以心伝心に極めて有用ではないか。現在、大学日本一になった野球部にあやかろうと、サッカー部員、駅伝部員も参加、運動部の男性陣だけでも400人超が絵手紙を学んでいるという。絵手紙を出す相手は、圧倒的に両親が多いとか。大学に通う息子から両親に絵手紙が届く。普通では考えられない。親は大喜びである。家族の絆も強まっていいことづくめである。小池さんの絵手紙が根付き、芽吹きつつある。今後が実に楽しみである。
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