加登屋のメモと写真…: 2017年12月アーカイブ
加登屋のメモと写真…
2017年12月アーカイブ

小林薫さん、船川淳志さん、国永秀男さん

清流出版 (2017年12月25日 17:28) | コメント(0) | トラックバック(0)

katoya17.12.1.jpg
船川淳志さん(左)と国永秀男さん

・12月1日、僕は朝からこの日を楽しみにしていた。弊社に株式会社グローバル インパクトの代表パートナーである船川淳志さんと株式会社ポートエム(Port of Effective Management)の代表取締役の国永秀男さんが来社する予定だったからだ。実際、お会いしてみると、共に初対面だったにもかかわらず、なんだかそんな気がしなかった。というのも、お二人は小林薫先生とはごく親しいお知り合いで、僕もなんだか昔からの知り合いのような気分になったからだ。お会いすることになったきっかけは、僕が清流出版ホームページに書いている「加登屋のメモ写真」である。小林薫先生が亡くなって、僕が追悼の記事を書いたのだが、それを読んだお二人からご連絡があったのだ。10月ごろに連絡があって、時間をそれぞれ調整した結果、12月1日に決まった。当日は船川・国永両氏と、弊社社長の藤木健太郎君、弊社の海外版権担当で国永さんとはドラッカーつながりの斎藤勝義さん、それに小林薫先生の著書の編集担当だった臼井雅観君も同席してしばらく歓談した。藤木君は所用で席をはずすことになり、僕らは場所を近くの中華料理屋に移して、昼食を摂りながら話を続けることになった。
 
・船川さんは1956年生まれの61歳。慶応義塾大学卒業後、東芝、アリコ・ジャパンに勤務、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)にて修士号を取得(MBA in International Management)している。その後、米国シリコンバレーを拠点に組織コンサルタントとして活躍された。日本に帰国してからは、グロービスのシニアマネジャーを経て、人と組織のグローバル化対応を支援するコンサルティング会社、グローバル インパクト社を大前研一さんらと設立して代表パートナーとなり、今日に至っている。シリコンバレーでコンサルタントをされていたわけだから当然ビジネス英語は堪能である。NHK教育テレビ「実践・ビジネス英会話」の講師も務められたこともある。

katoya17.12.2.jpg
船川淳志さん

・一方、国永さんは、僕の古巣ダイヤモンド社の傍系で、京都市中京区に本拠を置くポートエムという会社の代表取締役である。1962年生まれの55歳で、大阪工業大学卒業後、大手コンサルタント会社、経営情報サービスを手掛けるコンサルタント会社を歴任し、経営コンサルタント歴はすでに28年にのぼる。「正しいマネジメントこそがエクセレントな企業を作る」をモットーに、経営理論の確立やトップマネジメントチームの構築、あるいは経営戦略の策定まで、経営者とひざ詰めで作り上げる親身な指導法には定評がある。生前、経営学の神様の異名をとったP.F.ドラッカー博士を心から尊敬し、毎年のようにアメリカのご自宅に訪ね、ドラッカー理論に磨きをかけ、またその理論の日本での浸透に心血を注いできた。
 
 
katoya17.12.3.jpg   katoya17.12.4.jpg  
 
・お二人の小林先生との関わりは、ドラッカー博士を抜きにしては考えられない。船川さんは2008年5月、『GLOBAL manager』誌の、ご自身がホスト役を務める対談に小林薫先生をゲストに招いて対談している。対談テーマは、「世界標準となるビジネススキルの磨き方」。近年の世界的なビジネス潮流の変化に基づく日本的経営の課題と、個々のビジネスマンが世界で活躍していくためには、どんな資質が必要なのかなどが語られた。この対談の中には、小林先生のビジネススタンスに対する考え方がよく表れている。少し発言から引いてみよう。ビジネスマンに不可欠の資質を、小林先生はドラッカー博士の名言を例に説明している。「昨日を捨てよ」「表の風に吹かれろ」「革新とは、単なる新しい方法ではなく、新しい世界観を意味する」など、経営の神髄と時代の潮流を読み取って凝縮した名言があるとし、特に「強みの上に築け」の名言は、どんな組織、どんな人物にも当てはまるもので、ドラッカー経営学の要諦であると強調している。
 
・対談中、船川さんが、「共生」は世界に誇れる日本の理念ではないかと問いかけると、小林先生は「共生」が利潤追求のみに走らない独自の日本的経営モデルであると認めた上で、日本人もこれからはもう少し自己主張していくべきだと強調された。そして真に優秀なマネジャーとは、各国固有の文化の違いに惑わされず、どのような組織、風土でも活躍できなければならないとし、そのための資質としては、グローバル経営コンサルタントのスティーブン.H.ラインスミス(同氏の本も翻訳出版している)が述べたという、(1)大局観をもち、(2)リーダーとして変革を進め、(3)パラドックスを受け入れ、(4)予期せぬことを扱う際は、プロセスを重視し、(5)変化を好機と受け止めて気楽に対応し、(6)常にオープンでいる、と都合6つの条件を挙げている。
 
・また、グローバル化時代に世界で通用するマネジャーになるには、世界の経済状況、各国の力関係や日本立ち位置の変化などをしっかりと把握し、地理的、歴史的にも、視野を広く取って物事を見て、判断することが大事と語った。最後に、ドラッカー博士のグローバル経営成功のエッセンスを紹介している。それは現地で優秀な人材を活用し、相手の宗教や価値観を認めた古代ローマ帝国の統治なども参考にし、融和を図っていけばいいというものだ。歴史は繰り返すわけで、謙虚に歴史から学び、歴史への造詣を深めれば、必然的に未来も見通しやすくなるとアドバイスしている。
 
・僕は小林先生が例に引いたスティーブン.H.ラインスミスさんの著書『グローバル・マネジャー・ガイド』(小林薫訳)で感銘を受けた部分がある。それは雁行に学ぶリーダーシップ論である。隊列を組んで綺麗なライン・フォーメーションで大空を行く雁の群れの飛行は見事だが、そこから学べることは大きいというのだ。雁は家族や群れで過ごし、結束力も強い。外的を寄せ付けず、群れでものを食べているときも見張りを置き、ときには夜間にも飛ぶ。「雁の教訓」は多文化チームのメンバーに対し、強い感受性育成に参考になるとしている。(1)V字型の隊列で飛ぶことで、一羽の雁が羽ばたく度に後に続く雁のための揚力が生じる。単独で飛ぶより71%も飛翔距離を伸ばせる。共通の方向性とコミュニティ意識をもっているチームメートは、お互いの推進力の共有によって目的に到達できる教訓となる。(2)先導の雁が疲れると隊列の中に舞い戻り、別の雁が先頭位置について飛ぶ。辛い仕事を交代でやり、複数の人間でリーダーシップを共有することは価値がある。(3)隊列全体のスピードが鈍ると、後方の雁が先方の雁に鳴き声を挙げて励まし、せっつく。(4)1羽の雁が病気やケガを負った場合、1羽が隊列を離れ、落ちた雁が再び飛翔できるよう付き添う。要は助け合いの精神である。

katoya17.12.5.jpg
国永秀男さん

・国永さんも小林先生とはお付き合いが深かった。ポートエムのアドバイザーであったことでもそれはわかる。ロサンゼルスの「ホテルニューオータニ」で、小林先生が倒れたとき、国永夫妻がいなかったら、斎藤勝義さん1人では大変だったはずだ。ホテルマンに救急車の手配を頼み、小林先生の家族に連絡しなければならない。斎藤さんと国永夫妻は日程を変更し、ロスの病院まで同乗した。「LAC+USC メディカルセンター」に到着して専門医が診察。斎藤さんは付き添い、国永さんは旅行保険関係の問い合わせをする。この2人の迅速な対応がなかったなら、小林先生はもっと重篤になっていた可能性がある。
 
・国永さんが経営するポートエムは、マネジメントやコンサルティング、あるいは、学習のしくみ作りなどについて、直接ドラッカー博士からアドバイスを受けてきた。eラーニングの展開としてブレンディッド・ラーニングを導入、経営に携わる顧客のためにマネジメントを学ぶ支援を行っている。高邁な使命感をもって、ビジョンを体現する企業や組織が増えてくれればの一心から、コンサルティングや講演活動を続けてきた。ダイヤモンド社主催『ドラッカー塾』の専任講師として、経営者限定の「トップマネジメントコース」を始め、「エグゼクティブコース」、「マネジメント基本コース」なども展開し、ドラッカーマネジメントを体系的に学び、実践できると参加企業から高い評価を得ている。ドラッカー博士の「自らの強みを活かせ(Build on Your Own Strength.)」は、船川さんと同様、国永さんも胸に刻む言葉だという。バブル崩壊後の難しい経営局面の打開には、最も力を与えてくれる言葉ではないか。僕はそう確信している。

katoya17.12.6.jpg
 
・あと付け加えるなら、船川さんが、会話の途中で、しばしばフランスのロラン・バルトのことを述べたのが印象的だった。僕が、今から50年前、25歳から35歳の頃、入れ込んだ哲学者・批評家である。彼の『零度の文学』『神話作用』『表徴の帝国』などは、今でも僕の本箱の中、メインで取り出せる場所に置いてある。この周辺にソシュール、ジャック・ラカン、ジョルジュ・バタイユ、モーリス・ブランショ、ジャック・デリダ……などの書籍を置いてある。かつて真面目に読んだのだが、現在は怠慢になって、さっぱりご無沙汰している。懐かしい名前を思い出して、独り頷いた。だが現在も、船川さんはロラン・バルトとP.F.ドラッカーの関連に追究されている様子だ。
 
・僕は食前酒が食事をするときの楽しみの一つだが、船川さんが一滴もお酒が飲めないというのには驚いた。一見した限りでは「斗酒なお辞せず」の雰囲気があるからだ。僕の過ごしてきた出版界では、編集者が酒を一滴も飲めないと、作家とのお付き合いも大変だった。ビジネスの世界でもそれは同じだと言えるのではないか。それだけ個人的魅力をお持ちということであろう。船川さんは小林先生に是非にと乞われながら、果たせなかったことがあるという。それは産業能率大学で教えていた小林先生の後任として、教壇に立って欲しいと言われていたのだ。これだけは今でも心残りに思っているという。対照的に国永さんはお酒に強く、淡々と静かに杯を重ねるタイプとお見受けした。いずれにしても、小林先生のエピソードを聞くなど、楽しいひとときを過ごせた。談論風発する楽しい食事会となったが、お二人には感謝するしかない。

« 2017年11月 | メインページ | アーカイブ
検索
2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
カテゴリ