加登屋のメモと写真…: 2012年3月アーカイブ
加登屋のメモと写真…
2012年3月アーカイブ

瀬川昌治さんの演出した舞台を堪能!

清流出版 (2012年3月16日 11:07)

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・映画監督・瀬川昌治さんが、『乾杯!ごきげん映画人生』(定価2100円、2007年1月刊)に続いて、自伝的エッセイ第二弾『素晴らしき哉 映画人生!』(定価2310円、2012年3月刊)を弊社から刊行の運びとなった。今回は、僕も大好きなアメリカのフランク・キャプラ監督の名画『素晴らしき哉 人生!』をもじった書名である。映画ファンだったら、このタイトルに惹かれ思わず手に取るはずだ。瀬川さんと言えば、喜劇映画の名手の異名をとるが、脚本家、舞台演出家もされている。1925(大正14)年生まれで御年87歳になる。東京帝国大学文学部英文科の卒業である。東大時代、俊足・好打の野手として東京六大学野球でも大活躍された。

・瀬川さんの1歳年上の兄上・瀬川昌久さんも東京帝国大学法学部の卒業。富士銀行に入行し、ニューヨーク支店駐在中からジャズ評論を開始され、退職後は、音楽関連レクチャーやコンサート企画などを精力的に行った。弊社から『ジャズで踊って――舶来音楽芸能史』(定価2100円、2005年10月刊)を刊行されている。さらには三男・瀬川昌昭さんも東京帝国大学政経科を卒業し、NHKに入局。社会番組部長などを歴任され、現在は(株)瀬川事務所社長である。まさに秀才三兄弟だが、皆さん趣味が高じて実業として成り立たせている。これが僕にはうらやましい限りだ。このご兄弟も高崎俊夫さんが紹介してくれ、清流出版と縁を結ぶことができた。

・今回の『素晴らしき哉 映画人生!』の仕掛け人も高崎さんである。「清流出版ホームページ」の『高崎俊夫の映画アット・ランダム』欄ですでに二ヵ月前、この本について詳述されている。だから今回の僕のブログでは、新著の紹介は省かせていただく。詳しく知りたい向きは、高崎さんのブログを見ていただきたい。前著と少し違うのは、寺岡ユウジさんに編集協力をお願いしたこと。瀬川さんが眼の手術をされ、十全な執筆活動ができない不安があった。そのため、寺岡さんが取材を重ねて元原稿を起こしたもの。取材は20回以上に及び、実に四年がかりであった。その原稿に視力を恢復された瀬川さんが手直しをされ、完全原稿に仕上げたというわけだ。取材のほとんどは、九段会館の喫茶室で行なわれたそうだが、3月11日の東日本大震災による天井崩落事故によって会館は閉鎖された。そのこともあり、刊行スケジュールが延びてしまった。僕も何度も経験があるが、一冊の本が出来上がるまでには、いろいろハプニングがあるものだ。

・実は3年ほど前から、瀬川さんは「瀬川塾」を作り、後輩の若い俳優たちを育てておられる。今回、瀬川塾3周年記念特別公演のご案内を瀬川さんからいただいたが、面白そうな企画なので、清流出版のメンバー総勢10人で観劇に出かけた。会場は、築地本願寺のブディストホール。演目は鈴木聡作の『凄い金魚』である。演出はもちろん瀬川さん。出演者は瀬川塾の塾生18人に、ベテラン俳優の村山龍平さん、著名なコメディアンの山口ひろかずさんが協力出演している。鈴木聡さんは博報堂のコピーライターとして活躍する一方、劇団「サラリーマン新劇喇叭屋」(現・劇団ラッパ屋)を結成、演出家として二足の草鞋を履きながら活躍されている。この鈴木聡さんの『凄い金魚』、瀬川さんが目をつけ、演出に臨んだ。曰く――「ラッパ屋 鈴木聡の世界に喜劇映画の名手・瀬川昌治が挑む!」

・ちょっと長いが、話の顛末を皆さんにご紹介しよう。
≪中央線沿線のとある町にある高野家。映画プロデューサーである主人公・幸太郎はバツイチで、今は実家で妹、父、祖父と共に暮らしている。駅から徒歩圏内にあるちょっと古いその家の中庭には池があり、昔から金魚が飼われている。ある夏の日、幸太郎が幼い時分から毎年、ボランティアで池掃除をかって出てくれる「金魚のおじさん」が訪れたところから始まる。高野家の誰もそのおじさんの名前も素性も知らない。≫
≪たまたま家にいた幸太郎の大学の後輩・吾郎は、その怪しげなおじさんと口論となる。そこへ幸太郎と妹・聖子が現れて、ひとまずその場は収まる。≫
≪この時、離れで寝ていたはずの祖父・高野潤三が亡くなっていたことが発覚。亡くなった祖父はジャズ好きで洒脱なおじいちゃんだったらしい。あいにくの父の不在――山へ行ってくると言ったまま、数日間家を空けていた――もあり、葬式の手配にてんやわんやの長男・幸太郎。≫
≪金魚のおじさんの手助けもあり、その日のうちに通夜の手配をし、高野家は一転、親戚、知人、そして幸太郎の元妻・夏子、家を出て行って久しい長女の文子も会して賑やかな夜を過ごしていた。そこへ父・英太郎がリュックを担いで帰宅し、家族全員が集合。その後、祖父は趣味の映画作りで散財した結果として、その家を手放さなくてはならない、という新事実が明かされる。≫
≪あわてふためく家族。幸太郎は元妻・夏子とよりを戻したいと思っていた。ところが父・英太郎と夏子の会話を聞いて、「山へ行く」と言っていた英太郎が実は夏子と2泊3日で出かけていたことを知り、幸太郎は荒れまくる。高野家はさらなる混乱の迷路に入っていく。だが、あまりにも悪いことばかりの連続に、かえって開き直る幸太郎。すべてを受け入れ、明日からも生きていくことを亡き祖父に誓うのだった。≫

・早足でストーリーを紹介したが、ラストシーンは、暗くなった舞台に、祖父から父・英太郎に宛てた遺言テープの声が流れる。昼寝から起きていた幸太郎は英太郎と夏子との間に起きたことを知っている。やりたいことをやれ。淡々と語る祖父の台詞は、妙に頷ける。この話、微妙に現実の世間を皮肉っているように僕は思える。この演劇、初演は1996年4月だが、1997年11月にも公演、なんと驚くのは昨年1月「座・高円寺1」の公演、大地震があった昨年3月に「ラッパ屋第37回公演」、今年も2月に劇団ひまわりで「アトリエ新人公演」と、今回の3月に「ラッパ屋 鈴木聡の世界に喜劇映画の名手・瀬川昌治が挑む!」と、何回も公演が打たれていることだ。

・瀬川さんは、「お客さんには人間の機微に注目して観てもらいたいですね。話も二転三転、おもしろく展開していくので、観ていて飽きない作りになっています。セリフも非常におもしろい。塾生は完ぺきではないかもしれないけれど、おもしろく感じてもらえるはずです」と自信の演出と胸を張る。われわれ清流出版社員一行も、大いに楽しんだ。やはり演劇はこうでなくちゃ。

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