小池邦夫さん - 加登屋のメモと写真…
加登屋のメモと写真…
小池邦夫さん

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小池邦夫さんの痛々しい顔に注目。それでも会場控室で元気一杯に語る

 

・小池邦夫さんのことを7月号で書いている。続けて取り上げるのは本来、避けたいのが筋ではあるが、あまりに素晴らしかったのであえて書きたい。会場は日本橋三越本店の七階催事場である。かなり広いスペースをとりながら、タイトルは『緒形拳からの手紙。小池邦夫の師友16人展』。

 出かけたのは812日の金曜日である。大きな会場だけに余裕で展観できると思っていたら大間違い。入場してみると、人でいっぱいで動けない。圧倒的にご婦人方が多い。ほぼ、89割がご婦人であった。僕は電動の車椅子で行ったのだが、人ごみに呑まれて前にも後にも動きが取れない。間隙をぬって時間をかけながら、ようやく見て回った。

 

・入口付近には緒形拳さんの絵手紙である。『季刊 銀花』の愛読者用葉書で絵手紙通信を銀花編集部に送り続けたものだという。これが実に楽しく遊んでいて、興味深かった。いったん、文字を塗りつぶしてそこに絵を描いたり、はみ出さんばかりの書が踊っていたりする。編集部との行き違いで誤解していたことを素直に謝る言葉が書かれたものもある。緒形さんが描いたチャップリンの似顔絵なども飾られていたが、実にお上手で思わず見とれてしまった。

 

・次の会場は小池邦夫さんと緒形拳さんとの「25年間にわたる絵手紙交流」が展示されていた。小池さんは普段着の絵手紙の魅力をよく強調しておられるが、まさにそんな普段着の緒形さんからの絵手紙が目白押しだ。葉書に菊の花が書かれ、ただ、「ありがとう」と書いただけの書もある。中国のロケ先から送られたた和紙の海外便もある。また、弊社から刊行された田島隆夫さんの本を贈呈したのだろう、素晴らしい田島隆夫本を有難うというお礼状もあった。とにかく拝啓も敬具もない、フランクで自由な絵手紙のやりとりは、見ていても気持ちのよいものだ。

 

・小池さんと緒形さんとは、25年間の交流があったのだが、なんと話はほとんどしていないという。緒形さんが小池さんの新宿で行われた個展に来て、食い入るように見ていたのが25年前。そこから手紙のやり取りが始まり、細く長く続いてきた。会って話をすれば、テンションが下がってしまう。会いたいという気持ちを絵手紙に込めたからこそ、相手の琴線に触れる絵手紙となる。これが長続きした理由ではないだろうか。

 

・そして小池さんの16人の師友との絵手紙交流コーナーがあった。師として敬愛した瀧井孝作、中川一政の両御大から、樋口比庵、田島隆夫、棟方志功、北大路魯山人、渡辺俊明、高村光太郎、みつはしちかこなどまで、画家、書家、陶芸家、彫刻家、漫画家、作家と職業的にも実にバラエティに富んだもの。いずれも小池さんがほれ込み、ぶつかり稽古を繰り返してきた人たちだ。

 

・小池さんは、こうした芸術家の本業にはあまり興味がない。余儀ともいうべき、書や絵や言葉に惚れるのだ。惚れれば、雨あられと絵手紙を出し続け、ついには交流が始まるというわけだ。多少は強引でも、人を振り向かせてしまうというのが、小池流の絵手紙の力である。そのために日々に絵を鍛え、書を鍛え、言葉を磨いてきた。こうした人たちとの交流を経て、今日の小池さんがあることがよくわかった。

 

・近くの最後のコーナーには、被災地の皆さんからの絵手紙が展示されていた。小池さんが東日本大震災の被災地の絵手紙愛好者295名に送った絵手紙に、約200通余りの返事が届いたというのだ。そもそも295名に絵手紙をかく。これだけでも大変である。返事は結構だからと送ったにも関わらず、墨と硯をなんとか手にして返事を出している人がいる。

 

・肉親や親せき、友を亡くされ、食糧や水もままならない被災地の方々が、こんなにも励まされて返事を書いている。この絵手紙の持つ底力には脱帽である。葉書あり、巻紙に大書された絵手紙もある。大きさはともかく、一様に小池さんの絵手紙が届いたことに驚き、感激したことがよくわかる。生きる勇気をかきたてた一通の手紙の底力に、僕は本当に驚かされた。

 

・会場裏にある控室で小池さんとお話することができた。目についたのは、顎の部分に真っ白い包帯が見える。訊いてみると、今日狛江市役所前で転んで、病院で七針も縫ってきたというのだ。そういえば少し、歩き方もびっこを引いておられた。これだけの大怪我である。出てくることは難しい。それでもこの日がサイン会の日とあれば、這ってでも会場入りする。小池さんの強い責任感であろうか。精神力もお強い方なのだ。

 

・小池さんの絵手紙は今年で51年目を迎えている。その間、いろいろなことがあった。阪神・淡路大震災の時も全国の絵手紙仲間を募って励ましの絵手紙を描き、義捐金を届けている。そんな小池さんを僕はいつも敬愛している。絵手紙を創始してくれて感謝している。僕の周りには、絵手紙のファンが多い。小池さんの本も随分買っていただいている。これからもますます絵手紙の普及に尽力してほしいと願っている。そして思いやりの心、支えあう絆が強固になれば、日本は捨てたもんじゃない、明るい未来が待っているような気がしてくるのだ。

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