加登屋のメモと写真…: 2010年8月アーカイブ
加登屋のメモと写真…
2010年8月アーカイブ

鈴木皓詞さんを囲んで

清流出版 (2010年8月 2日 16:27)

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鈴木皓詞さん(左)を囲んで。右から秋篠貴子、藤木健太郎、僕

・月刊『清流』は創刊以来、今年で17年目に入っているが、創刊号からご執筆されている方が二人だけいる。安芸倫雄さんと鈴木皓詞(こうし)さん(左)である。そのお一人、茶道家の鈴木皓詞さんをご紹介したい。僕が、同期会や仲間の集まりに行くと、皆さんから「鈴木皓詞さんの連載を楽しみにしている」とよく言われる。僕の数少ない女友達も、圧倒的に鈴木さんファンが多い。『清流』の最新号が届くと、真っ先に鈴木さんのページを開くという方が多いのだ。趣味が茶の湯という方は、すべからく鈴木さんの誌上弟子と思っているに違いない。そして、鈴木さんが取り上げる話題は実に多岐にわたる。日本の伝統行事から、戦国武将や高貴な方、僧門の偉い方、文化人等の茶にまつわる逸話など、心に沁みてくるお話ばかり。だからこそ、もっと読みたいという方が多いのも、当然といえば当然である。


・鈴木皓詞さんは、北海道のお生まれ。得度して僧籍に入るが還俗。日本大学藝術学部卒業、在学中より裏千家の茶の湯を学ぶ。主な著書には、『近代茶人たちの茶会』『茶道学大系4・吉兆料理と日本料理』『茶の湯のことば』(以上、淡交社刊)、『茶の湯からの発信』(清流出版刊)、『物に執して』(里文出版刊)等がある。いずれも数寄者の蘊蓄が凝縮されている。お茶の世界は、茶室、庭、茶道具、焼物、掛けもの、書画……など、広範囲にわたって関係してくる。美術品の鑑定もよほどの目利きでなければ務まらない。あの小林秀雄も何度か苦渋を飲まされている。真贋を見分ける目を養う近道というものはない。骨董屋さんも一流になるには、小僧の頃から本物を見続けて、目を肥やしていくしかない。鈴木さんは、その確かな目利きのお一人。「ご覧になって、この壺、茶碗……はこの値で決めましょう」という値決めをすることも許されている。かつて中尊寺の夥しい宝物の値段が、何年もかけ、鈴木さんのアドヴァイスによって確定したという話もある。


・鈴木さんとのお付き合いも、かれこれ30年になろうか。きっかけは僕のかつての職場の同僚、否、麻雀、競馬、将棋等の遊び仲間であった田村紀男さん(元ダイヤモンド社社長)に紹介されたことによる。田村さんは秋田県出身で直木賞作家の和田芳恵氏の甥筋とか聞いた。その同郷の和田芳恵さんを師匠として学んだ鈴木皓詞さんは、最初、小説家志望だった。その後、曾野綾子さん、三浦朱門さんご夫妻と運命的な出会いをする。例えば三浦朱門さんが文化庁長官になった際、鈴木さんは秘書役として尽くされた。いまはその三浦さんも日本芸術院院長。鈴木さん曰く「私はこのお二人の食客で、週に4回もごちそうになったこともあるんですよ」。長いお付き合いである。曾野綾子さん、三浦朱門さんとの交流では、数々の面白い逸話もあるようだ。抱腹絶倒の話もお聞きしたが、差し障りがあるのでここでは言えない。


・鈴木皓詞さんは、茶の湯の世界では“裏千家”のみならず、“表千家”、“武者小路千家”など、流派を超えて親しいお付き合いをされているとか。そういった付合いができる人というのは、この世界でも稀有な存在らしい。月刊『清流』以外にも、『淡交』、『なごみ』、『目の眼』等の専門誌などに茶の湯のことを書いておられる。この日も、『目の眼』の最新号を持ってきて僕にくれた。『目の眼』には「物に執して」のタイトルで連載している。この号が実に135回である。松永耳庵のことをお書きになっていたが、耳庵翁のことは『清流』や『茶の湯からの発信』でも、何回も書いてくださっている。僕は、その耳庵さんには頭が上がらない。直接、松永安左ヱ門に、どうこうしたというわけではない。実は鈴木さんが年に何回かくれる酒の名前が、「松永安左ヱ門翁」(玄海酒造 壱岐)なのだ。高価で貴重な本格焼酎で、呑み始めたら止められない美味しさである。他にも鈴木さんは、「森伊蔵」「百年の孤独」等の銘柄を僕に送ってくれたことがあるが、いずれも素晴らしい焼酎であった。


・この日、『清流』の編集担当・秋篠貴子は、鈴木さんの連載したページが出来上がって雑誌を持って行ったが、実は、僕はもう一冊わが社の単行本を持って行った。『独歩 辻清明の宇宙』(辻清明著、写真・藤森武、装丁・坪内祝義、31,500円)がこの日、見本が上がってきていたので、鈴木さんに見せて感想を聞こうと思ったのだ。だが、これは野暮であった。一目見るなり、鈴木さんは話題を変えた。この席は、鈴木さんご贔屓の名店「鮨寛」(港区六本木)である。美味しい寿司を肴に、お酒を楽しむ場所である。それが、もてなしの心というものである。正直言って、これほどの美味しい酒と寿司は近ごろ味わったことがない。著者である鈴木さんにご馳走になったのでは、本末転倒である。今回散財させたのを申し訳なく思う。鈴木さんにはポトラッチを上回るもてなしの心があるようだ。

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