加登屋のメモと写真…: 2007年11月アーカイブ
加登屋のメモと写真…
2007年11月アーカイブ

ナタリー・カヴァザンさん 岸本葉子さん

清流出版 (2007年11月 1日 15:19)

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  • わが社の海外版権担当顧問の斉藤勝義さん(後列中央)が、めずらしい方を紹介してくれた。早稲田大学で客員研究員をしているナタリー・カヴァザンさん(前列中央)だ。彼女は、フランス人の地理学博士である。
  • 15年前に来日し、筑波大学で1年半、経済地理学の研究をした。そのあと一旦、帰仏されたが、日本が忘れ難く再来日、以来、かれこれ日本での滞在も10年以上になる。慶應義塾大学、東京大学、東京国際大学などの客員研究員や講師をされ、現在は早稲田大学国際情報通信研究センターで客員研究員をされている。語彙も豊富でかつ巧み、言語障害がある僕以上に日本語がお上手である。
  • カヴァザンさんは、今年9月に「東京圏の産業クラスター政策」と題する論文を情報発信セミナーで発表された。1990年以降、東京の中心部にITゾーン、ハイテク研究ゾーンなどが出現し、政府が学術研究政策と産業振興政策とを統合した「枠組み計画」を打ち出した結果、ある重大な変化をきたしたという趣旨の論文。ここでは詳細を省くが、若き異国の学者の発言として傾聴に値するものだ。
  • 「産業クラスター計画」は、もともと経済産業省が推進してきた産業集積構想である。また、「クラスター」は本来「葡萄の房」を意味する。転じて数個から数百個単位での群れや集団を意味する言葉として用いられている。ここで「長島葡萄房」のオーナー長島秀吉君(後列左)をこの席に呼んだ僕の暗喩が分かった人がいたとしたら相当勘は鋭い。
  • 葡萄の「房」(物理学で原子および分子の、数個?数十個ないしそれ以上の集合が原意)は、カヴァザンさんの論文の中心的なテーマである。クラスターの意味論を超え、長島君はフランス語に堪能かつ熱心で、いまもってモンテーニュを原書で読んでいる稀有な人。さらに本欄ではお馴染みの、正慶孝明星大学教授(前列左)と長島君と僕は早稲田大学政治経済学部経済学科の同級生ということも、一堂に会した理由である。
  • 僕はこの日、カヴァザンさんに『ガイア・マニュフェスト』(仮題)という著書の上梓を提案した。地理学の空間・時間発想から、渾沌とした現在の世界を見つめ直し、その視点から経済、文化、政治、宗教、歴史......の意義を再発見する。上梓された暁には、現代の若者たちにも読ませたいと思っているが、ユニークな「新しい時代のガイア地理学」は話題を呼ぶであろう。
  • 昼食を共にしたこのひと時は、談論風発する楽しい雰囲気に終始した。僕はカヴァザンさんにこんな質問をしている。「かつて地理学者といえば『地人論(人類と大地)』(L'Homme et la terra)を書いた19世紀のベルギー人エリゼ・ルクリュのようにアナーキズム思想に裏打ちされた、いわば今日のエコロジー発想とした地理学者が多かった(『地人論』の邦訳もアナーキスト石川三四郎)。カーペンター、バクーニン、クロポトキンなど同時代人も共通の考えだった。そのような思想的傾向は現代の地理学では全く見られなくなっているが、どうしてだと思いますか?」と......。カヴァザンさんは、しばらく考え、その背景についての個人的見解を交え、明快に答えを返してきた。これ一つとっても、彼女の実力のほどが伺えた。
  • カヴァザンさんは観世流の勝海登氏を師匠として謡・仕舞を習っている。「能は間、場、時間が重要な要素。日本人の"間"の考え方、捉え方にとても興味を惹かれている」と彼女は語った。日本の伝統文化を尊重し、そこから自分の学問の研究材料に役立てたいと願っている。日本人すらあまり関心を示さない能や世阿弥の世界に注目する、いまどき奇特な若いガイジンである。来る11月3日(土)には、渋谷のセルリアンタワー(東急ホテル)能楽堂で仕舞「胡蝶」を舞うという。前祝も兼ねて僕と2人で「鶴亀」の謡本の一節を唸った。しばし、浮世を忘れ、至福の刻を味わうことができた。
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  • 今月の「編集部から」の欄で秋篠貴子が書いているように、岸本葉子with HOPE★プロジェクト編著『ちょっとだけ凹んでいるあなたへ――希望の言葉を贈りあおう』が、いよいよ11月初旬に刊行となる。弊社から『からだの事典』『葉と葉子のふたりごと』の2冊の単行本を出させていただいた岸本葉子さん(右)のお声掛かりの企画である。写真では、右端の岸本さんから左へ生長恵理さん、鈴木富幸さん、桜井なおみさんが映っている。この時は第2回目の顔合わせで、初めての8月1日には、このメンバーに鈴木理香子さんが加わっていた。企画の趣旨に僕も大いに賛同し、刊行に期待を寄せていた。
  • 岸本さんの好リードもあり、打ち合わせはスムーズに進んだので、担当の秋篠と臼井出版部長にまかせ、僕はとくに何もしなかった。「希望の言葉を贈りあおう」に応募してきた、たくさんの言葉の中から、本に掲載する言葉選びを手伝っただけである。読みながら応募者の熱い想いをひしひしと感じた。それに加えて、十数名の著名人の人選とその方々からの入稿を見守った。
  • 「HOPE★プロジェクト」は、今年3月、がんや難病などとともに生きる人々が生を全うすることを支援したいと、がんサバイバーの女性たちが設立した団体である。「IT時代の言葉の玉手箱」づくりや、がんについて語り合う「カフェ・トーク」、園芸療法を通じた子育て世代の患者と家族支援(ボタニカル・キッズ・クラブ)など多彩な活動を展開している。「希望の言葉を贈りあおう」プロジェクトは毎年実施し、岸本葉子さんがその実行委員代表を務める。
  • 同プロジェクトは念願のNPO法人認証も10月に取得。いよいよ意気壮んの真っ最中、つまり『ちょっとだけ凹んでいるあなたへ――希望の言葉を贈りあおう』刊行直前、なんと理事長の生長恵理さん(右から2人目)が10月21日、肺がんでお亡くなりになった。享年45。本職は毎日新聞「水と緑の地球環境本部記者」であった。
  • 僕は、生長恵理さんとは2回しか会っていない。だが、物静かな中にも闘志を内に秘めた感じの方だった。「『希望』は誰もが必要とし、喜びであり、支えであると、一層深く実感させてもらうことになった。そして、私たちに、大きな夢をもたらしてくれた。かかわったすべての人へ、ありがとう。」と、『あとがき』に書いてくれたのが最後のメッセージとなった。生長さんは、僕の中では、出版人を経て評論家、学者になった富山和子さんにイメージが重なる。富山さんは都市、環境、資源問題、分けても「水と緑と土」の専門家である。生長さんが生きていたら、富山さんは恐らく、生長恵理さんと岸本さんとも手に手を携えて、一緒に運動を展開する場面もあったろうにと想像している。謹んでご冥福を祈りたい。
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