2006.02.01写真と日記2006年2月

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 昨年末わが社から、『"ことば美人"になりたいあなたへ――明日を輝かせる31のヒント』『タイム・オブ・イノセンス』と二冊の著訳書を刊行されたほか、月刊『清流』の最新3月号の「この人に会いたくて」欄にもご登場いただいた堤江実さん(右)。次回刊行予定の絵本『うまれるってうれしいな』(仮題)の打ち合わせで画家の杉田明維子さん(左)を伴って来社された。一歳児から本に親しんでほしいとの願いを込めて、親子で本を楽しめるようにお二人が協力し、文と絵で心温まるメッセージの一冊にしてくれた。
 堤さんは4月から約100日間、講師として豪華客船に乗船して詩の朗読をされる予定なので、その前に校正を済ませる段取りを臼井君に頼んだ。多分、4月上旬には刊行できると思う。杉田明維子さんとは初対面であったが、僕と共通の画家を何人も知っていて、旧知の間柄のように話が弾んだ。
 また、少し遅れてきた堤未果さん(中央)は、堤江実さんのお嬢さんで、アメリカ生活が長かった方。わが社から刊行した『セームズ坂物語 全四巻』でお世話になった原田奈翁雄さんと金住典子さん編集の季刊雑誌『ひとりから』(編集室 ふたりから刊)で、「世界中のグラウンド・ゼロ」のタイトルでエッセイを連載している新進気鋭のライターだ。今年は、名編集者・原田奈翁雄さんの肝いりで書き下ろしの単行本に挑戦することになっているとか。その話を聞いて、ぜひわが社からその単行本を刊行させて欲しいと僕は申し出た。今年、わが社は堤親子でベストセラーに挑戦できたら面白いと思っている。

 

 

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 アナウンサーの小川宏さんご夫妻(写真)と。先にわが社から刊行した『宏です。小川です』が好評で、もう少しで増刷に王手がかかるくらいまできている。この本をご執筆いただきながら御礼の挨拶が遅れてしまったが、編集部一同、やっと奥様の富佐子さんもご一緒にお食事をともにすることができた。小川さんご夫妻は見るからに仲のよいご夫婦である。夫婦の間でも駄洒落やジョークが飛び交っているとか。確かに小一時間ほどの間にも、そんな片鱗が垣間見えた。
 その軽妙洒脱な小川さんだが、信じられないことに実はうつ病の体験者である。65歳の時に重いうつ病にかかり、自殺を考えて富佐子さん宛てに遺書をしたため、電車に飛び込もうとする寸前まで追い込まれたことがある。NHKの「こころの相談室」や「徹子の部屋」などテレビ番組でもこのうつ病体験を話されているのでご覧になられた方もいるだろう。現在も薬は服用しておられるが、精神的には安定しており、全国各地でうつ病に関するテーマを中心として講演活動をされている。
 最近、うつ病患者は急増しており、予備軍も含めると大変な数にのぼるそうだ。しかし、精神科というとマイナス・イメージが先行し、「俺は精神病ではない」などと及び腰になり、医者に行きたがらない人が多いのだそうだ。だから医者の処方で快方に向かうはずが、益々追い込まれて症状を悪化させることになる。小川さんは自らの体験から、そんな心配は杞憂であることを講演先でも強調してきている。
 今回、原稿をご持参いただいたが、これは奥様の富佐子さんががんを患い生還されたこともあり、夫婦での壮絶な病と闘いの日々を単行本にできたらとの思いがあってご執筆いただいたものだ。その第一稿をお持ちいただいた。『うつ病とがんからの生還』か『うつもがんも踏みこえて』というのが、小川さんご提案のタイトル案だが、原稿をじっくり読ませていただいて、いいタイトルを決めたいと思っている。

 

 

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 野本博君(中央)が紹介してくれた清水正さん(左)。清水さんは野本君の大学で一年後輩だが、浅からぬ因縁がある。野本君が部活で自動車部の主将で活躍したが、部長はナポレオンの研究で有名な長塚隆二教授が務めた。その長塚先生が部長を辞めるとき、若い清水正講師が後を継いだ。それが縁で、放送学部卒の野本君が文芸学部卒の清水さんと知り合いになった。いまは、清水さんも立派に日本大学芸術学部の教授である。奇遇にもわが社の長沼里香は、日本大学芸術学部大学院で清水教授の教えを受けた教え子に当たる。
 野本君は無類の本好きであるが、友人の清水さんはそれに輪をかけた読書家。読書の達人のほか、無類の大作の書き手として驚愕させられた。古くは『ドストエフスキー「罪と罰」の世界』(創林社刊 465ページ 1986年)を筆頭に、つい最近の『志賀直哉 自然と日常を描いた小説家』(D文学研究会 403ページ 2005年)、一番厚い本の『つげ義春を読め』(鳥影社刊 676ページ、2003年)などを含め、分厚い大書をこれまで約30冊お書きになっている。近年は、鳥影社という長野県諏訪市の地方出版社で出された本が多い。
 清水さんとお話してみると、文学と漫画で僕と合い通じる世界がある。それもユニークな視点をお持ちの方なので、単行本を刊行させてもらうことにした。題して『うらよみ ドストエフスキー』。たまたま『カラマーゾフの兄弟』の話題になったが、驚いたことに清水さんの説によると、ゾシマ長老とスメルヂャコフの関係が親子であるという解釈が成り立つのだという。僕の記憶だと、下男で乞食の子であるスメルヂャコフが、あの『カラマーゾフの兄弟』で父フョードルが白痴の女に生ませた男ではなく、三男・博愛家のアリョーシャの師ゾシマ長老の息子だという驚愕の新説となる。これ一つだけでも、この『うらよみ ドストエフスキー』がユニークであること間違いない。ドストエフスキーはまだまだ謎の部分が多くて、深遠の闇に溶け込んでいる。そんな闇に清水さんが独自の視点から切り込んで、読み解いていくのを読むのは心地良い。応援したい気持ちになった。このほか、清水さんの説を聞くと、わくわくすることが多い。例えば宮沢賢治の世界、とくに賢治童話における数字には秘密がいっぱい、という話には興奮させられた。野本君は、大変な友人を紹介してくれたものだ。

 

 

 

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 作詞家の来生えつこさん(中央)が企画打ち合わせのために来社された。前回のホームページでも書いたが、来生さんは作家・エッセイストのキャリアもなかなかのもの。言葉の感性と、視点に独特なアングルを持っていらっしゃる。その特性を活かして本作りをやれば、ユニークなエッセイができるに違いない。その日の雑談から得た直感で僕は『なんかへんかな』という仮タイトルでいきたいと提案した。来生さんもこのタイトルに異論がなかった。日本の現状を見て、来生さんの眼で「変かな」、「不思議だ」と思うことをエッセイでまとめてもらう企画だ。
 来生さんは団塊の世代。普段は、東京と千葉の館山で生活しておられるという。二都物語である。その辺りから、団塊の世代にヒントとなる視点も期待できよう。また、来生さんがいま夢中になっているダイビングや着物の話題は、女性の生きる指針としても参考になる。
 雑談になった時、将棋の話で盛り上がった。実は来生さんは、奨励会に所属するプロの卵について、将棋を習ったことがあるのだという。そこで藤木君は来生さんに、わが社の将棋好きの女性である秋篠を紹介した。本当は時間があったら、一番お手合わせしたいところだったが、この日は先約があるということで諦めた。だが、来生さんが帰った後、金曜日の夜ということもあって、藤木君は秋篠(わが清流出版女流王将&名人)と対戦したようだ。

 

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 月刊『清流』の連載「鎌倉つれづれ」でお馴染みの歌人、作家の尾崎左永子さんと。この日、尾崎さんが主筆を務めておられる『星座――歌とことば』(かまくら春秋社)の創刊5周年記念を祝う会が行なわれて、松原淑子副編集長、野口徳洋さん(『清流』のフリー編集者)と出席した。僕はおよそパーティーなどと名のつくものは、すべて避けて通りたいところだが、憧れの尾崎さんに会えるからと横浜のホテルまでいそいそと出かけた。この写真の通り、尾崎左永子さんは美しい着物姿。凛とした中にも色気さえ感じさせる佇まい。同行した野口さんによると、尾崎さんの年齢であれば、「色気を感じる」というのは褒め言葉なのだという。
 尾崎さんは、つい先だって、『神と歌の物語 新訳 古事記』(草思社刊)を上梓され、各紙誌の書評で高評価されている。その尾崎さんが『星座』という雑誌に力を入れておられる。隔月刊誌だが、毎年7月1日発行の号は《清流号》と名づけられている。偶然のこととはいえ、わが月刊『清流』も尾崎さんの「歌とこころを賛歌する雑誌」にあやかって、美しい日本語を次代へ伝えるための努力をしたい。
 創刊5周年記念会は、冒頭に鎌倉文士を代表して作家の早乙女貢さんが挨拶されたのをはじめ、各来賓祝辞のあと小山明子さんが尾崎さんに花束を贈呈された。僕と同病を患った大島渚さんを看病して、自らもうつ病を乗り越える感動的なテレビ番組をつい先日見た僕は、一言、小山明子さんに声をかけたいと思っていたが、会場が混雑していて見失いチャンスを失った。
 会場は盛況で、著名人で目移りするほどであった。松原淑子は受付で月刊『清流』に連載執筆していただいている久世光彦さんの名札を見つけ、会えると期待していたが、結局、この日は現われなかった。僕は会場で何人かの方とお話した。その時、印象に残った方のお写真を次に載せる。

 

 

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 作家、評論家の紀田順一郎さん(中央)。僕は、紀田さんの名著『第三閲覧室』(新潮社刊)のような独特な推理ものをわが社でご執筆いただけないか、と声をかけた。近年、『紀田順一郎著作集』(三一書房)を出し、その後、『近代世相風俗誌集』『事物起源選集』などの大作を手掛け、少々、疲れたと言う。僕は、『デジタル書斎活用術』『インターネット書斎術』『オンラインの黄昏』などの線は、と矛先を変えた。だが、紀田さんは今まで書いた未発表の作品があるので、それを素材にしてどんな本ができるか、少し考えてみたいとおっしゃる。考えがまとまったら来社し、わが社から必ず刊行すると約束してくれた。

 

 

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   写真家・田沼武能さんの夫人で歯科医として活躍され、また最近は料理研究家の肩書きを持っている田沼敦子さんと。ご夫婦で月刊『清流』にご登場いただいたこともあり、わが社のことはよく知っておられる。会場では田沼さんの近著『取り寄せても食べたいもの』(法研刊)が、真っ先に話題となった。後日、送っていただいたこの本のおかげで松原と秋篠の女性陣二人が、田沼さんのNHK文化センター主催セミナーに出かけることになった。そして、田沼さんにはわが社からも新しい企画を仕掛けたいと松原が積極的に働きかけた。

 

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   鎌倉のライターとして僕には懐かしい本多順子さんと。月刊『清流』にレポーターとして活躍されたのは確か6年前だった。その後、ご自分で冬花社という出版社を設立して活躍されている。つい最近も『こころのデッサン』(小尾圭之介著 写真:小尾淳介)を送っていただき、わが社では付けられない価格(定価840円)と編集部一同ビックリした。オールカラーの美しい本が何でこんなに安くできるのか、見習いたい。そのほか、冬花社刊行の『回想の芸術家たち――「芸術新潮」と歩んだ四十年から』(山崎省三著)は、僕には懐かしい山崎さんを思い出させる本である。会場では、本多さんゆかりの『本多秋五全集』(菁柿堂刊)を出す快挙をやった高橋正嗣さんのことをちょっとお話した。

 

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 堀口すみれ子さんは、詩人、エッセイスト、料理研究家として活躍されている方だ。この日、『星座――歌とことば』のパーティーにふさわしい詩の朗読をされた。その一つは、お父上の堀口大學さんの詩だった。会場はシーンとなって、詩の朗読に聞き入った。つくづくいい会だなあと思う。堀口さんには月刊『清流』の4月号で、「【桜】――わたしのおすすめこの10名木」という企画で、近々、野口徳洋さんが取材をする予定。
 あと、『星座――歌とことば』の表紙の絵を毎回描いている石原延啓さん(石原慎太郎東京都知事の四男。下の写真左)をはじめ、作家の安西篤子さん、詩人の白石かずこさん、かまくら春秋社の社長・伊藤玄二郎さん(下の写真右)などがいらしたが、半分くらいの方しかお話することができなかった。

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